株式会社とLLC(合同会社)の特徴と違い
株式会社とLLC(合同会社)、二つの特徴や違いについて、なかなか分かり難いところだと思います。まずはそれぞれの特徴を紹介し、次に違いを簡単に表でまとめてみました。
株式会社の特徴
- ■出資者は有限責任
- 株式会社へ資本金を出資する人(「株主」といいます。)は、有限責任となります。株主は、各自が出資した金額を限度として保護されます。
- ■株券は原則不発行
- 平成18年5月から施行されている会社法では、株券は原則不発行です。発行したい場合は、定款に発行する旨を定めることで発行することが出来ます。
- ■会社の意志決定最高機関は「株主総会」
- 株式会社では、会社の重要事項(定款の変更や役員の選任・解任等)を決定する際には、必ず株主総会を開催して決議します。
- ■株主と取締役は委任関係
- 株式会社では、「株主=取締役」ではありません。株主は会社の所有者という立場で、取締役を選任して会社の経営を委任する、という関係です。もちろん、株主自身が取締役になることは、何も問題ありません。
- ■取締役、監査役等の任期は最大10年
- 株式会社の取締役の任期は原則2年、監査役と会計参与の任期は原則4年ですが、一定の要件を満たし定款で定めれば、いずれも最大10年まで設定することが出来ます。
LLC(合同会社)の特徴
- ■出資者は有限責任
- LLC(合同会社)へ資本金を出資する人(「社員」といいます。)は、有限責任となります。社員は、各自が出資した金額を限度として保護されます。
- ■社員が業務執行役
- LLC(合同会社)では、社員が業務執行役としての権利を持っています。
社員が複数人いる場合、それぞれが業務執行役となりますが、定款で一部の社員のみを業務執行役にすることも出来ます。 - ■業務執行役社員には任期がない
- 株式会社であれば、取締役等は最大10年という任期がありますが、LLC(合同会社)では、任期はありません。
- ■内部自治の原則
- LLC(合同会社)は、運営をしていく上で内部自治を原則としています。
LLC(合同会社)では株主総会のようなものはなく、業務を運営・執行する際には社員全員で話し合いを行い、過半数で決議していきます。 - ■重要事項を決議する際は社員全員の同意
- LLC(合同会社)では、定款の変更、持ち分の移転等の重要事項を決議する際には、社員全員の同意が必要です。
- ■利益の配分は出資の割合にとらわれず変更が可能
- 株式会社では、所有する株式数に応じた配分となりますが、LLC(合同会社)であれば、社員全員の同意があれば出資の割合にとらわれず、好きな割合で利益を配分することが出来ます。
株式会社とLLC(合同会社)の違い
株式会社 | LLC(合同会社) | |
出資者の名称 | 株主 | 社員 |
出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 |
設立・運営の必要人数 | 1名以上 | 1名以上 |
意志決定最高機関 | 株主総会 | 社員総会 |
業務執行者 | 取締役 | 業務執行社員 業務執行社員を選任しなければ社員全員 |
業務執行者と出資者の関係 | 委任契約 株主以外でも選任可 |
社員本人 社員以外は選任不可 |
業務執行者の任期 | 通常2年、最大10年 | 任期無し |
会社の代表者 | 各取締役 代表取締役を定めることも可能 |
各社員 代表社員を定めることも可能 |
決算公告 | 毎事業年度ごとに必要 | 不要 |
利益の配分 | 株式の割合に応じて配分 | 出資割合に関係なく社員の合意で自由に配分 |
株式(持分)の譲渡 | 自由 ※譲渡制限をかけることも可能 |
社員全員の同意が必要 |
株式会社とLLC(合同会社)の違いを簡単にまとめてみましたが、意外と相違点があるものです。
この中で特に注目していただきたい点を挙げていきます。
- 業務の執行は株式会社では取締役が行い、LLC(合同会社)では社員が行うこと
- 業務執行の取締役に任期があるのに、社員には任期がないこと
- 決算公告が株式会社は毎事業年度ごとに必要なのに、LLC(合同会社)では必要ないこと
- 利益の配分について株式会社は株式の割合に従うのに、LLC(合同会社)は持分に関係なく自由に決められること
- 株式(持分)の移転について株式会社は原則自由なのに、LLC(合同会社)では社員全員の同意が必要なこと
一般的に会社といえば「株式会社」ですが、LLC(合同会社)には役員に任期がない、毎年の決算公告が必要ないといったメリットがあります。
規模をあまり大きくせず、数人で事業を行うような場合、LLC(合同会社)という選択も視野に入れてみてはいかがでしょうか。